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METAスマートグラスを検証して気づいた、営業データ活用の本質的な問題

作成者: 杉﨑 雄志|Jun 3, 2026 8:05:06 AM

 

5月21日、METAスマートグラスが日本で発売されました。


渋谷・原宿のRay-Ban直営店には整理券が発行されるほどの行列ができ、オンラインストアでも売り切れが続出。私も実際に店舗に足を運び、試させていただきました。

目的は対面営業の現場に持ち込んで、AIによる営業支援の新しい形を実現できるかどうかを確かめるためです。

結論からお伝えすると、現時点での購入は見送りました。ただ、この検証を通じて、多くの営業組織が抱える「商談データ活用の構造的な問題」について改めて考えるきっかけになりました。私が考えていた未来の営業がどのような取り組みなのか、なぜ検証を断念したのか、そしてそこから何が見えてきたのか、順を追ってお伝えします。

| 私が描いていた「未来の営業」とは

元マイクロソフトのエンジニアで起業家の中島聡さんの著書『2034 未来予測 ― AIのいる明日』に、AIスマートグラスを活用した営業シーンが描かれています。これを読んだとき、「今、実際に検証できるかもしれない」と思いました。
私が想定したオペレーションは以下の5段階です。

営業が体感する視覚・聴覚をAIとリアルタイムで共有し、アシストと記録と育成が同時に走る世界観です。これが実現すれば、若手営業でも即戦力として動けるようになり、マネージャーの負担も大きく下がるはずです。 

| なぜMETAスマートグラスでは実現できなかったか

実際に試した結果、2つの壁がありました。

① ハードウェアの制約:連続録画は最大5分

METAスマートグラスは、連続して5分以上の録画ができません。デバイスが発熱するというハードウェア上の問題が理由です。PCやスマホを長時間使っていると熱くなる、あの現象がメガネでも起きるわけです。60分の商談であれば、12回録画を手動で再設定しなければならない。現場運用としては現実的ではありません。

② データ連携の制約:クローズドなエコシステム

現在の仕様では、録画データの格納先は個別のスマートフォンのストレージのみ。クラウドストレージや外部AIサービスへの自動連携はできません。AIアシスト機能も「Hey!META!」という起動ワードが必要で、商談中に自然に使える状況ではありません。

仕組みを作ればできるかもしれませんが、運用・保守の手間を考えると現実的ではないと判断しました。

| スマートグラス以外の方法でできる商談データを活用した営業力・営業組織の強化

スマートグラスの制約から今回の検証を断念しましたが、期待していただけに非常に残念でした。商談データの取得とAIアシストを組み合わせることで、営業育成や案件管理の課題が大きく改善できると見込んでいたためです。

しかしながら、スマートグラスを使わなくても、音声データであれば対面営業でも取得できますし、コロナ禍を経てオンライン商談が普及し、商談録画データが企業内に蓄積され始めています。

ただ、これを有効活用してマネージャーが案件内容を把握したり、見込み判断や営業メンバーへのフィードバック・育成に活かせている企業は、多くありません。

また、対面営業の場合、音声データをうまく取得する方法を知らないため、一次データを取得する仕組みがそもそも存在せず、マネージャーは営業メンバーからの報告をベースに案件を判断するしかありません。実際に同席してみると「聞いていた話と全然違う」という事態が起きることもあります。SFAには商談履歴が残っている。録画データも溜まってきた。それでも、「なぜこの案件が負けたのか」をデータを根拠に説明できる組織は、ほとんどないのが実態です。

これが、営業の属人化が解消されない根本的な原因の一つだと感じています。

| 商談データを解析してわかった「現場の実態」

私は現在、営業マネージャーに代わって商談録画データを解析し、案件内容・課題・フェーズ・合意形成状況を構造化してレポートする支援を行っています。この取り組みの中で、データを見て初めて明らかになることが多くあります。

〈ケース1〉禁止していたはずの対応が、現場で常態化していた

想定通りのオペレーションが実行されていると思っていたところ、音声データを解析してみると、禁止していたコミュニケーションが多発していることが判明しました。報告ベースでは見えなかった実態が、データによって初めて可視化されたケースです。

〈ケース2〉「売れていた営業が不調」の原因が、データで一目瞭然に

原因不明の不調を抱えていた営業メンバーの商談を解析したところ、以前修正したはずのコミュニケーションのクセが再発していることが判明。感覚や印象ではなく実データをもとに本人と改善に向けた合意形成を取ることができました。

〈ケース3〉「ヒアリングしているつもり」が、実は誘導だった

解析してみると、営業の発言が大半を占めており、ヒアリングと見えていた質問の多くが自社に都合のよい誘導になっていることが判明。顧客が腑に落ちないまま商談が進行していた構造が可視化されました。商談スタイルを見直した後は、発話比率・オープン/クローズドクエスチョンの割合など、定量的に商談を判定できる仕組みが整いました。

いずれも、「そういう問題があるかもしれない」という感覚はあっても、データがなければ指摘できなかった内容です。

なぜ今、この課題に向き合う必要があるのか

この問題を放置するリスクは、年々大きくなっています。

「売れる営業を採用すればいい」と考える経営者・営業責任者の方も多いと思いますが、人口減少が進む中、優秀な営業人材の確保はかつてないほど難しくなっています。そのため今求められているのは、営業経験がなくても素地のある人材(例えば、相手の話をしっかり聞ける人、自分の意見をきちんと伝えられる人、人当たりが良く関係構築が得意な人) を採用し、いかに早く立ち上げられるかです。育成・指導の仕組みがなければ、採用コストをかけて入社した人材もコストになり続けます。

マネージャーが正確な情報を持てなければ、見込み予測がブレ、経営判断の精度も下がります。そして最も深刻なのは、トップ営業が退職した瞬間に売上が激減するリスクです。属人化した組織は、一人の離脱で事業が揺らぎます。再現可能な仕組みをつくることは、リスクヘッジであると同時に、組織としての成長投資です。 

C・S・Dが提供できること

C・S・Dは、マーケティングから営業・CSまで一貫したプロセス設計の経験を持ちます。SFA導入後の活用定着、データ活用による営業改革の支援実績があります。単なるツール導入支援ではなく、現場で使われ、売上につながる仕組みをゼロから設計・定着させることが強みです。

現在は特に、多忙な営業マネージャーに代わって商談の録音・録画データを解析するサービスを提供しています。「決めたオペレーションが現場で本当に実行されているか」「何が問題で売れていないのか」をデータに基づいて可視化し、明確な打ち手・フォロー・育成につなげることで、売上改善を支援します。

今後への期待と、今できること

今年の秋口にはGoogleがGeminiを搭載したスマートグラスを発売予定と聞いています。METAも、Ray-BanやOakleyといったデザイン性の高いブランドと提携しており、普段使いできるデバイスとしての進化が期待できます。ハードウェアが実運用に耐えうるレベルに達したとき、私が描いた営業シーンは現実になるでしょう。

ただ、ツールが来てから準備するのでは遅い。「商談データを組織の財産にする」という設計は、今から始められます。

営業の属人化に課題を感じている、あるいはSFAを導入したが成果につながっていないと感じている方がいれば、まず60分の無料相談からお声がけください。貴社の現状をお聞きし、どこにボトルネックがあり、何から手をつけるべきかを整理してお伝えします。提案・営業は一切行いません。現状の課題を構造的に整理することだけを目的とした時間です。

「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎します。