先日、面識のない方から突然Facebookのメッセンジャーに連絡が来て、最終的にお取引いただけることになりました。
昨今、AIを念頭においたマーケティング戦略や仕掛けの設計がBtoBマーケティングの中でも注目を集めており、実際に着手されている企業様や、AI経由で商談を作られている企業様も出てきているかと思います。こういった話を聞いて、私自身もAIOやLLMOといった対策が必要だなと漠然と考えていたものの、今回の出来事で本格的にAIによるマーケティングの重要性を実感いたしました。
ただ、今回一番の学びだったのは「AIに見つけてもらえた」ということ自体ではありませんでした。最終的に決め手になったのが、私が書いた記事ではなく、4年前にユーザベースのメディアに載った、第三者のインタビューの中で私について記述された記事だったということです。
つまり、コンテンツをたくさん作れば対策になる、という単純な話ではなかった。ここが今回、一番考えさせられた点でした。
実際にお取引先様からお話を聞いたり、自分でも検証を進めていく中で明らかになった一連の流れを、記載したいと思います。
正直、突然Facebookメッセンジャーから連絡がきた時に、「あれ、なんか怪しい連絡きたな」というのが最初の印象で、警戒しまくっておりました。(とても失礼で申し訳ございません。。。)
というのも、面識のない相手から、SNS経由で、いきなり有償での相談の打診だったためです。文面は丁寧で具体的だったのですが、昨今はSNSアカウントの乗っ取りも珍しくないですし、実在する会社名を騙るケースもあります。
ただし、文面を見る限りフィッシングのようなものでもなさそうでしたし、とても気になる内容ではありました。一度商談してみたいなという気持ちがあったことは確かです。
なので、まず会社名と代表者名で検索して、法人としての実在性を確認しました。設立年、所在地、法人番号。そのうえで、代表者本人が運用している別のSNSアカウントを特定して、そちらから「ご本人でしょうか」と確認の連絡を入れました。
すると翌日、公式サイトの問い合わせフォーム経由で、先方から改めて連絡が来ました。会社ドメインのメールアドレスだったので、そこで「大丈夫そうだな」と安心し、返信することにしました。アカウントの乗っ取りであれば、公式サイトの窓口から自社ドメインで問い合わせをしてくることはないと思ったからです。
なお、心配性すぎないか?と言われるかもしれませんが、情報セキュリティの観点では非常に重要なことだと思っています。お互いの情報資産を守るための当然のプロセスですし、万が一なにかしらの問題が発生した時に、対象の企業様やすでにお取引をいただいている既存のお客さまにも迷惑がかかるからです。
実際、事情を説明したことで先方は好意的に受け止めてくださり、打ち合わせはスムーズに進みました。
「怪しさ満点」から「信頼できる」に至るまでに踏んだ、6段階の確認プロセス。
手間はかかるが、お互いの情報資産を守るための当然の手順。
営業が体感する視覚・聴覚をAIとリアルタイムで共有し、アシストと記録と育成が同時に走る世界観です。これが実現すれば、若手営業でも即戦力として動けるようになり、マネージャーの負担も大きく下がるはずです。
商談の中で、率直に聞いてみました。なぜ私に声をかけてくれたのか、と。
返ってきた答えは、ある領域の経験者をChatGPTに調べさせてリスト化していたところ、その中に私の名前が挙がった、というものでした。
ここで私の職業病が出たのですが、どうやって調べたのか?リスト化した後にどのように判断されたのか?他の候補者と比較して連絡していたのか?など、具体的な行動が気になって仕方なくなってしまいました。
普段は営業やカスタマーサクセスの支援を中心に行っておりますが、集客もプロセスの中に関わってきます。AIがどのような条件でどういう人物をピックアップするのかを検証すれば、自社の集客はもちろん、お客様にも情報を還元できるのではないかと思いました。
先方に事実確認を行う前に、ある程度仮説を持っておきたかったため、先方が使ったであろうプロンプトを推定して、ChatGPTに調査を依頼してみました。使ったプロンプトは、「該当領域の出身で、営業プロセス設計から定着支援まで担える人材をリストアップしてほしい」というような内容です。
ChatGPTから出力されたのは、業界の著名な経営者や役員クラスの方々のリストでした。私の名前はどこにもありません。
条件を変えて「もっと知名度が低くても、独立して実務に強い人を」と指示すると、今度はまったく別の人物リストが出てきました。1回目と2回目で重複がほぼゼロ。(残念でしたが、こういうところも対策が必要だなと反省しました・・・)
ここで「もしや」と気づいたのが、このときAIはおそらくWeb検索を実行せずに、すでに学習済みの知識から「それらしい人物像」を都度組み立てて出力していた可能性が高い、という仮説です。出力された経歴の記述も、断定的な割に裏が取れないものが混ざっていたためです。
再現実験としては失敗だったのですが、この失敗自体が示唆的でした。AIは、条件やモードによって参照している情報源がまったく違う。「AIに聞けば正しい答えが返ってくる」という前提は、少なくとも今の実務では通用しないということです。
補足しておくと、この検証はChatGPTの無料版で行っています。AI活用の支援をしているのに有料契約もしていないのかと思われそうなので書いておくと、もともとChatGPTも有料で契約していました。ただ検証した結果、自分の使い方にはClaudeとGeminiのほうが合うと判断して解約しています。今回はChatGPT経由の話だったので、あえて無料版で試した、という経緯です。
AIに聞けば、必ずしも「正しい答え」が返ってくるわけではない。AIの種類によって、参照する情報源も出力の信頼度も
まったく異なるため、何をどう確認すればよいか、前提知識を持って使い分ける必要がある。
ChatGPTでの再現がうまくいかなかったので、今度はClaudeを使って調査を進めました。
Web検索を伴う形で、私に関する公開情報を洗い出していったところ、いくつかの候補が出てきました。その中で、条件に合致しそうな記事を特定できたので、あとは事実確認です。
先方に、この記事でしょうか、と具体的にURLをお送りして確認したところ、まさにこの記事でヒットした、との回答をいただきました。ここで、ようやく一連の流れが確定しました。
調査の結果ヒットしたのは、私が前職のFORCAS(ユーザベース)に在籍していた当時、会社のオウンドメディアに掲載された、同僚へのインタビュー記事でした。
出典:ユーザベース「Uzabase Journal」 「Design Innovation」で見えた景色。カスタマーサクセスチームのリーダーとして
この記事は、私が書いたものではありません。私が主役ですらありません。当時、チームリーダーを打診された足立さんへのインタビュー記事です。
記事の中で、彼女がリーダーに必要な力について語る場面があります。ユーザーの経営層やキーパーソンを巻き込んでいく力が必要だと考えて、その力を持つメンバーとして私を挙げてくださっていました。そして私の強みは顧客の経営層を巻き込んだ活用提案にあった、という評価が、彼女自身の言葉で書かれています。
自己PRではなく、一緒に働いた人間による、具体的なエピソードを伴う評価。これが4年後、AIにも検索エンジンにも読み取れる形でネット上に残っていて、私が知らないところで、私を必要としている方に届いていた、ということになります。
ここが今回、個人的に一番知りたかったところです。
私は自社サイトもブログも運用していますし、noteも書いています。SNSもやっています。そのどれもがヒットせず、4年前の他社メディアの記事が引っかかった。AIOやLLMOを考えるうえで、これはかなり示唆的だと思っています。
理由は大きく2つあると考えています。
これが一番大きいと考えています。
私が自分のコンテンツで狙っているのは「営業の属人化」「SFAが定着しない」「再現性がない」といった課題ワードです。つまり「何ができる人か」で見つけてもらう設計になっています。
ところが今回のクエリは「該当領域の出身者は誰か」という人物検索でした。課題ではなく、経歴と所属を軸にした問いです。
AIは意味の近さで候補を拾います。人物検索のクエリに対して最も近いのは、人名と企業名と役割が一つの文書の中で明確に結びついている情報です。あの記事は「杉﨑」「FORCAS」「カスタマーサクセス」「具体的な評価」が一本の記事に揃っていました。人物検索に対する回答として、これ以上ないくらい素直な形をしていたわけです。
一方、私自身のコンテンツは手法論が中心で、自分の経歴を繰り返し明示しているわけではありません。課題クエリには強くても、人物クエリには弱い。この構造に、正直まったく気づいていませんでした。
コンテンツをたくさん作れば対策になる、という単純な話ではない。AIOやLLMOで重要なのは、量ではなく、
人物クエリ・課題クエリなどターゲットの検索クエリを想像すること。そして、そのクエリにヒットする情報を整備していくこと。
自己申告によるコンテンツは誰もが簡単に作れてしまい、良くも悪くも自分の差配次第で書けてしまうことから、情報の質や信憑性としての重みが出にくい。それに対して第三者が、具体的な場面を伴って書いた評価には、自己PRとは比較にならない説得力があります。おそらくこれは、人が読むときだけでなく、AIが情報を評価するときにも効いているのだと思います。
なお、私自身が書いたnoteを先方が読んでくださったのは、1回目の面談の後でした。つまり、私を発見するきっかけにはなっていないということです。私を見つけてくれたのは他人が書いた記事で、私の思考や価値観などをプラスで確かめるのは私自身が書いた記事。この役割分担は、けっこう本質的だと思っています。
今回の一連の検証で、私が一番強く感じたのはここです。
AIOやLLMOの対策と聞くと、どうしても「AIに拾われるコンテンツをたくさん作る」という発想になりがちです。私自身もそう考えていました。
ただ実際に起きたことは、そうではありませんでした。効いたのは、私がコントロールできない場所に、第三者の言葉で、具体的な場面を伴って残っていた評価です。
つまり論点は、コンテンツの量ではなく、信頼性をどうやってAIと検索する人の両方に伝えるか、ということだと思います。
そう考えると、やるべきことは自然と見えてきます。
自社の信頼資産を月1回セルフチェックする、6項目の無料診断リスト
取材、登壇、事例掲載、パートナー企業からの言及。こういうものは、その瞬間はリード獲得に直結しないので後回しにされやすいと思います。ただ今回のように、4年後に想定もしなかった経路で届くことがあります。ネット上に残る第三者評価は、消えない推薦状として働き続けます。
ここで一点、自戒を込めて書いておきたいことがあります。「第三者に語ってもらう」と聞くと、自社サイトにお客様の声や導入事例を量産する、という発想になりがちです。私もそう考えていました。
ただ今回効いたものを振り返ると、それだけでは足りない気がしています。効いていたのは、他社のドメインに、実名と所属が明確な人が、具体的な場面を伴って書いた評価でした。自社サイトに載せる事例は、どこまでいっても自社が編集した情報なので、自己申告に近い扱いになる可能性があります。
なので事例を作るのであれば、可能な範囲でお客様側やパートナー側のメディアに出していただく形を狙ったほうが、資産としての価値は高いと考えています。共催セミナーのレポートや、お客様自身のnoteなどがこれにあたります。ハードルは上がりますが、一本の重みが違います。
同じ理由で、LinkedInの推薦文もかなり有効だと思っています。推薦者の実名・所属・役職が紐づき、人物クエリとの相性が良いためです。構造としては、今回の記事とほぼ同じ形をしています。
ただし、依頼して書いてもらう性質上、内容が「素晴らしい方です」といった抽象的なものになりがちです。そうなると、今回効いたような具体性は生まれません。お願いする際に「あのプロジェクトのこの場面について書いてほしい」と具体的に伝えられるかどうかで、資産としての価値はまったく変わると思っています。
自社が編集権を持つコンテンツは、どこまでいっても自己申告に近い扱いを受ける。他社ドメインのメディアなどコンテンツで、
実名と具体的なエピソードがあると、信頼資産としての重みが増す。難易度は高いが、価値が高い取り組み。
「何ができる会社か」は書いてあっても、「誰が、どういう経歴で、何をやってきたのか」が構造的に読み取れる形になっているか。ここが抜けている企業は、多いのではないかと思います。私自身がまさにそうでした。課題ワードでの発見だけを想定していると、今回のような人物起点の検索にはまったく引っかかりません。
そのうえで、月に一度でいいので、ChatGPTなどに「自社の顧客が抱えていそうな課題」と「自社が属する領域の経験者は誰か」の両方を投げてみて、自社や自分が候補に挙がるかを記録するといいと思います。課題クエリと人物クエリでは結果が違う、というのが今回の学びなので、両方見ておく価値があります。無料でできる健康診断のようなものです。
逆に、AI向けの特殊な最適化テクニックを追いかけるのは、あまり意味がないと思っています。主要各社が公式にそうした裏技の効果を否定しています。やるべきことの大半は、地道な信頼の可視化です。
AIが人を推薦し、そこから商談が生まれる。私も今回初めて実体験して感じましたが、この流れは、すでにさまざまなシーンで発生していると思います。だからこそ、AIOやLLMOの対策は必要だと、今回の件で本気で思いました。
ただ、その中身は「AI向けの小手先の最適化」ではなく、自社や自分の信頼性を、AIにも人にも読み取れる形でどう残していくかという話でした。ここは営業やカスタマーサクセスの設計と、根っこは同じだと思っています。
今回得られた知見は、自社の集客だけでなく、お客様への支援にも活かしていくつもりです。
もし、「うちの実績も何かしら残せるはずだが、どう可視化すればいいか分からない」とか、「AIを営業やカスタマーサクセスにどう組み込めばいいか分からない」といったことを感じられたのであれば、お気軽にお声がけいただければと思います。今回のような検証プロセスも含めて、事実ベースでお付き合いします。
もし、成約率のばらつきや、営業の強みが言語化できていないこと、AI活用の進め方に課題を感じているなら、まずは現状のヒアリングからお気軽にご相談ください。
※本記事に登場する企業・個人は、先方の意向により匿名としています。
※引用元:ユーザベース「Uzabase Journal」(https://www.uzabase.com/jp/journal/220623-di-adachi)